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2025/11/09 14:13



2025.11.10「小さな祈り」ゝシルス
11月10日よりシルスさんの作品を当店で展示させていただきます。
 
朽ちゆくもの、行き先がないものに再び息吹を吹き込み命を宿すシルスさんの愛嬌たっぷりの作品たち。その見た目だけでなく様々なものが簡便になり消費される時代だからこそシルスさんの作品作りの背景を多くの方に知っていただけたらと思います。

シルスさんとお会いする度、シルスさんの作品に触れる度、暮らしの中にある気づかなかった宝物のような喜びや幸せを感じます。是非多くの方に作品を触れていただけたら幸いです。

今回の展示はシルスさんがかねてよりつくりためてきた郷土玩具の作品たち。郷土玩具の原点である「信仰的な祈り」を端的に、そして郷土玩具に通じるあたたかさとシルスさんの制作意識をテーマに「小さな祈り」という名前を付けました。ひとつひとつ表情が異なり、見ていただく方の心にゆっくりと沁みゆく作品ぜひお楽しみください。
 
以下、シルスさんより
日本のあちらこちらでつくられ、三千近くあるともいわれる郷土玩具。その多くは、江戸時代から明治時代にかけて生まれたのだそうです。
身近にある材料を用い、厄除け、疫病除け、健やかな子どもの成長、商売繁盛、開運出世、五穀豊穣、家内安全など、健気に生きる人々が切実な願いや想いを、自然や動物などの形に託したものです。それらは、仕上がりの美しさや繊細さをたたえる美術作品とは端緒が異なりますが、その佇まいは、土地柄や人柄、素朴さ、気迫、神秘性、郷愁に溢れ、愛嬌もにじみ出ていて、私にとって大変魅力的です。
郷土玩具蒐集家の清水晴風によれば、郷土玩具について「信仰的につくられたもの」を定義の第一に挙げており、作り手の「祈り」が込められているとも言えます。稚拙ながら私は、流木や廃材を拾い集め、制作を続けてきました。
様々な祈りが込められた郷土玩具には到底及びませんが、朽ちていくものや捨てられたものに今一度いのちを吹き込みたいという姿勢は、おそらく郷土玩具の作り手の心に通底しているものと信じています。だからこそ、魅せられているのだと思います。
ここ数年、大変恐縮だと思いながら、私なりの郷土玩具を制作してきました。さらに恐縮だと思いつつ、この度、展示させていただく運びとなりました。どうぞ手にとっていただき、愛嬌など・・・感じていただけたなら幸いです。
シルス 
参考:「はじめましての郷土玩具」甲斐みのり署 グラフィック社
 
【シルス】
はじめまして、「ゝ」と書いて「シルス」といいます。「シルス」とは、今は亡き祖父の名前です。広告の裏面をメモ代わりにし、使い古しのタオルは雑巾にし、外食時にはあらかじめ食べれる量にしてもらう・・・。
声無きものへの畏敬の念を大切にする姿勢は、私も年を重ねるにつれて大切なことだと思うようになりました。そんな祖父の想いを受け継ぎたく、「ゝシルス」として創作しています。
海に流れ着いた流木、道端に転がっているプラスティックや金属・・・手に取らなければそこで朽ちていくもの。その佇まいは美しく、魅力的です。それらの素材と向き合ってできあがる作品は、創っているというより、創らせてもらっているような不思議な感覚を抱きます。
流木は川から海に流れ荒波を越えて再び陸に流れ着きます。そのかたちは角が取れ、丸みを帯びていて、深みがあります。どこか祖父に似ています。
作品たちが、巡り合う方たちの生活の中に息づき、目にしたときにフッと力が抜ける・・・、そんな作品づくりを目指しています。